研修部「令和6年度 主題研修実践報告会・主題研究の成果について」
2025年3月31日 09時55分令和6年度 主題研修実践報告会・主題研究の成果について
1 研究主題
「3つの資質・能力の育成」を目指す学習の基盤となる「情報活用能力」の育成
(3か年計画)
重点目標:情報活用能力を育成するため、個に応じた指導の充実を図りながら、各教科等の特性を生かした授業づくりを実践する
1年次サブテーマ:「情報活用能力の整理と情報活用能力の観点を取り入れた授業づくり」
全ての学習の基盤となる資質・能力である「情報活用能力」はパソコン機器やタブレット端末の操作ばかりではなく、情報そのものを適切かつ効果的に活用する力も含まれています。本校の児童生徒にとっても、情報機器を操作する力や、情報を取捨選択して活用する力、プログラミング的に段取りする力、情報モラルやセキュリティについて理解し、情報に向き合う力を高めていくことは、将来の生活や希望の実現に向けて不可欠であると考えます。そして、それらの力を育成するための授業づくりにおいては、令和5年度までに取り組んできた「言語能力の育成」と同様、児童生徒が主体的に「情報」を扱うことができるよう、児童生徒の実態や各教科の特質、教科等横断的な視点で丁寧に取り組んでいく必要があります。本校の児童生徒の実態に応じ、より具体的に「情報活用能力」を捉え、適切な学習場面で育成を図ることを目指すことで、さらなる資質・能力の育成が期待できると考え、本テーマを設定しました。
今年度の成果として、令和7年1月22日(水)に各グループの報告会が行われました。
【「いいねメモ」の紹介】発表を聞いて、「いいね!」と感じたことを記入し合いました。
〇情報のインプットとアウトプットの場面がしっかり確保されている授業場面がよいと思いました。
〇児童が好きな学習だからこそ、自分から情報を取り入れようとしているのだと思いました。
〇言葉の精選、キーワードの設定が授業の分かりやすさにつながっていました。
〇自分で答えを探すことで、自身の心に浮かんだ疑問とも対話できるのだと感じました。
〇動画で自分たちの動きを振り返ることで、客観的な自己評価につながり、他者評価も加わって自己肯定感が上がると思いました。
各グループの取り組みから研究仮説にそれだけ迫ることができたか、分析を行いました。
【準ずる教育課程チームでの取組】
<取り入れた情報活用能力の観点とその目指す主な姿>
・見通し・計画 → 目標に向けて主体的に取り組んでいる。
・取捨選択 → 情報を適切に処理している。
・表現・発信 → データを効果的に使って発信している。
・評価・改善 → 自己を客観的に捉え、改善策を考えている。
・情報収集 → 学習への興味・関心が高まっている。自分から調べている。
・批判的思考 → 必要になる 情報を分析・判断している。
・創造的思考 → 情報を組み合わせて考えている。答えを導き出している。
・多角的に情報を検討しようとする態度 → 友達と意見を交わし学び合っている。
・情報の関連付け → 目的の実現に向けた方策を考察している。
・改善しようとする態度 → 他者の意見を参考に改善しようとしている。
<成果>
〇友達の意見(情報)を聞いて自分の考えをまとめたり、自分の意見(情報)を話したりしながら、新たな発見に気付くこともできた。
〇授業の導入と終末における自分の予想・思考の違い(変化)に気付くことができた。
〇ICT機器を活用して、情報収集、まとめ・発信ができるようになった。
〇自分で必要な情報を収集し、情報を関連付けて、解決の糸口を導き出すことができた。
〇データをもとに自己理解が深まり、目的が明確化された。
〇課題に対して、自分から思考する姿勢が身に付いた。
<考察>
・情報(自分や友達の意見など)を視覚化して共有することで、協働的な学びにつながった。
・学習の中でICT機器を活用できる場面を児童生徒が理解することにより、主体的に学ぶようになっていった。
・本校の児童生徒は障がいの特性から、生活経験が不足したり、行動が制限されたりすることが多いが、ICTを活用していくことで学習の理解の助力としていく。
・学ぶ意欲を引き出す課題や発問の仕方を探っていく。
【知的教科代替の教育課程チームでの取組】
<取り入れた情報活用能力の観点とその目指す主な姿>
・見通し・計画 → 課題解決のため必要な情報を思い浮かべている。
・情報収集 → 対象物を見たり、触ったりしている。課題に必要な情報を集めている。
・整理 → 言葉と動きを一致させている。
・取捨選択 → 目印を手掛かりに選んでいる。課題解決に必要な情報を選んでいる。
・分析・読み取り → 目印を手掛かりに課題に取り組んでいる。視点をもって情報を読み取っている。学習の始まりと終わりがわかるなど、見通しをもてる。
・表現・発信 → 自分の思い・考えをまとめている。感じたことを表情や身体の動きで表現している。教師の働きかけに応えている。
・評価・改善 → 自分で間違いに気付く。
・批判的思考 → 2つ(以上)のものを比べている。事実をもとに対象物を確かめている。根拠をもとに自分の意見や考えを話している。
・創造的思考 → 自分で教材を操作しながら考えている。友達の意見を聞いて、自分の考えを話している。
・多角的に情報を検討しようとする態度 → 友達の様子を見ている。児童生徒同士で学び合っている。いくつかの情報を分析したり、整理したりしている。
<成果>
〇情報を手掛かりに、課題に取り組んだり、興味・関心をもって活動したりすることができた。
〇操作しやすく、正解だと分かりやすい教材を取り入れたことで、児童生徒が試行錯誤しながら正解を導くことができた。
〇友達の様子や教師の反応を見ることで、具体物を見たり、気付いたりするようになった。
〇物に対する興味・関心が広がった(見る、触る、期待する)。
〇自分で課題解決に必要な情報を収集し、目的に応じて取捨選択までできるようになった。
〇教師や教材への注視時間や教師の働き掛けに対する反応(表情、手の動き)が増えた。
〇学習内容を共有することで、学習理解が深まった。
〇ゲームの勝敗が分かり、得点を意識して自分から動くようになった。
〇やり取りの仕方を共通化したことで、日常的な場面や学級以外の教員ともやり取りができるようになった。
<考察>
・様々な学習を重ねてきたことで、児童生徒の興味・関心が広がり、表出の場面が増えてきた。
・ICT機器や情報をどう活用すれば良いのか気付き、主体的に活動に取り組むようになった。
・情報(自分や友達に意見など)を視覚化して共有することで、学習の理解が深まった
・行動評価の難しさから、児童生徒の目指す姿を教員で共有しながら授業づくりに取り組む。
・児童生徒が情報をどのように受信しているかを探っていく。
・情報の内容を精選し、情報を効果的に活用するための環境やタイミングについて探っていく。
【2年次に向けて】
今年度は、福島県県中教育事務所作成の「情報活用能力の体系表【例】」をもとに児童生徒の実態把握に取り組み、教師間で児童生徒の「できること」「難しいこと」「不明なこと」などについて共有を図りました。そこから、情報活用能力の観点を取り入れたことでどんな姿が目指せるのか仮説を立て、授業実践を行いました。授業実践を通して、「情報を視覚化したり共有したりすることで主体的な学びが促進され、学習の理解が深まった。」、「児童生徒がICT機器を活用できる場面を理解することで、主体的な学びにつながった。」といった成果があがっています。一方、情報を使って思考したり、検討したりする場面や教師の働き掛けに対して発信する場面において、「児童生徒の情報をどのようにイメージして受信しているのか。」といった意見があり、今年度の課題をもとに児童生徒の実態をどう捉えて、授業の中でどのような姿を目指すのかを考えていく必要も出てきました。また、主体的に学ぶ素地を育み、問題発見・解決能力につなげるためにも、学ぶ意欲を引き出す課題の設定や発問の内容を工夫していきたいと思います。
※「情報活用能力の観点」は、福島県県中教育事務所作成の「情報活用能力の体系表【例】」の小項目から流用。